美術科特別講座@東京都立総合芸術高等学校

2022年9月30日、株式会社梅ノ木文化計畫は、前年度に引き続き東京都立総合芸術高等学校にて、VR芸術教育プログラム『eye for art』を用いた特別講座を行いました。

今回は、東京国立近代美術館所蔵の木彫作品を高解像度の360度・180度カメラで撮影、制作したVR教材『見ることは作ること ̶彫刻編 ̶ 《幼児表情》橋本平八』を、美術科1年生6名と2年生4名、先生方に体験していただきました。講師として、武蔵野美術大学彫刻学科の冨井大裕さん東京国立近代美術館美術課長の三輪健仁さんにご参加いただき、体験の前後に講義とディスカッションを行いました。

普段の授業と比較した本教材のメリットとして、生徒の皆さんと先生方から下記の意見が挙げられました。

「通常であれば危険な位置から、道具の動きが見られる」
「美術館で展示されている時には見ることができない位置から作品を観察できる」
「説明している人が見ている箇所やディテールが聞き手にも同時に共有されるため伝わりやすい」
「説明を受けている時にも視線を気にせず周りを見渡すことができる。またその場合でも教員の声が遠くならずはっきりと聞こえる」

ご自身も作り手である冨井さんからは、木彫と前回のVR教材で取り上げた塑像を比較しながら、素材や道具は扱いやすさだけでなく、実際に作って現れるイメージの良し悪しを軸に選択することも大切だというお話が出ました。また、「なぜノミで彫った跡を残すのか」という生徒さんの質問に対しては、「作品が形として良いかどうか」を判断する必要性や、作品を生き生きさせるために「あえて手を止める」という選択肢があるというお話もありました。

三輪さんは、本教材のタイトルである「見ることは作ること」というフレーズに触れながら、「他の人の作品を見ることと、自身の制作は接続するか。モチーフや世界観だけでなく、技術的な部分で影響を受けるか」と、生徒の皆さんが作り手として考えていくための問いを投げかけてくださいました。このフレーズには「見ることと作ることが繋がるような学習のきっかけを作りたい」という『eye for art』を制作するためのモチベーションが込められています。

授業の最後は、「素材と技術をどのような解釈で扱うか、そこにオリジナリティがある。VRも同様で、どのような目的でどのような使い方をするかが重要だ」といった冨井さんのお話で締めくくられました。

そのほか、体験した方々から「酔ってしまった」「タ行(破擦音)が耳に障る」「作品の下面も見たい」「ゴーグルの当たる顔周りがくすぐったい」といったご意見もいただきました。

三輪さんからは、「制作に使う道具の紹介や制作過程を推測した講義を行うことで、作品を鑑賞する際の新たな視点を得られる。そしてこのプログラムの体験後、実際にどのようなところに関心が向いていくのか気になる」という感想をいただきました。

今回の授業では、VR教材での体験をもとに、より実践的な美術の話、作り手である生徒の皆さんたちの実制作に直接的に関わるようなディスカッションが繰り広げられました。引き続き、生徒さんたちの芸術活動に還元していけるような発展性のある内容を目指していきます。

*関連記事:『eye for art』実証デモ@東京都立総合芸術高等学校
      『eye for art』実証デモ@武蔵野美術大学彫刻学科

協力:株式会社ベクターデザイン